マズローの5段階欲求から学ぶ自己実現をかなえるステップとは？

「自己実現」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるでしょうか？


理想や目標を掲げ、それを達成している人でしょうか？SNSで目にする、仕事と子育てを両立させ、輝いて見えるワーキングマザーでしょうか？


普段目にする憧れの女性像が、なんとなく頭に浮かぶかもしれません。


では、具体的に自分にとっての自己実現とは何か？と考えると、はっきり分からないという方もいるのではないでしょうか。


「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階に分けて説明した『マズローの5段階欲求説』というものがあります。


この記事では、自己実現理論とも呼ばれるこの理論の中で、人が持つ欲求にはどのようなものがあるのか、また自己実現とは何を指すのかを解説します。

マズローの5段階欲求説とは？

『マズローの5段階欲求説』とは、アメリカの心理学者アブラハム・ハロルド・マズローが提唱した『欲求の階層』の理論のことで、人はみな5つに階層化された欲求を持っているというものです。


欲求の階層については、分かりやすくピラミッド型で表わされることが多く、目にしたことがある方もいるかもしれません。

マズローは、人の行動は無意識的な欲求に動機づけられていると考え、次のように主張しています。


・人には「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」「承認の欲求」「自己実現の欲求」という5つの基本的欲求が存在する

・人のもつ基本的欲求には、相対的な優先度による階層を構成している

・低次の欲求が満たされるとより高次な欲求が現れる

・基本的欲求が満たされることで心理的な健康度が増す

マズローの5段階欲求説における5つの欲求とその具体例

マズローの提唱した5つの基本的欲求について、ここでは階層の下に位置する欲求から順に、具体例とともに紹介します。

生理的欲求

「生理的欲求」は、生命を維持するのに大きく関わる欲求で、食欲・性欲・睡眠欲などが代表的なものです。


階層の最も下に位置していて、満足のための緊急性が最も高い欲求とも言えます。


子育て中の方は産後の状況を思い出してください。


子供の生理的欲求、つまりミルクやおむつ替えの要求はいつでも”待ったなし”の状況ではなかったでしょうか。

安全の欲求

生理的欲求がある程度満たされると現れるのが「安全の欲求」です。


身の安全や身分の安定、他人への依存、不安や混乱からの自由、秩序・法・制限などを求める欲求もこれに当てはまります。


人は生理的欲求と同じくらいこの安全の欲求に支配されていて、全能力を動員して満足を得ようとする、とマズローは考えました。


ここでも乳幼児との日常を想像してみます。


お腹が満たされて、おむつもきれいな状態の我が子。ふと母親の姿が見えないと気づくと大声で泣いて母親を求めますよね。


これは安全の欲求が満たされていないと感じた子供が、全力でそれを求めている状況だと見ることができます。

所属と愛の欲求

人は孤独な状況で生き続けるのは困難です。安全な環境が手に入ると、今度は家族や友達、同僚などに目が向き、集団の一員になりたいという欲求が現れます。

さらには愛情を持って受け入れられたい、友情や信頼関係を築きたいと思います。

自分が求められている、ここに居てもいいと安心して思える。

このような状態を望むのが、所属と愛の欲求です。

子育てをしていると、色々大変なことがあります。それでも、母親が産後の体力的にも精神的にも大変な時期をなんとか生き延びられるのは「子供から圧倒的に求められている」という所属と愛の欲求が満たされている状態だからではないでしょうか。

承認の欲求

所属と愛の欲求が満たされると、今度は承認の欲求が芽生えます。


マズローによると、承認の欲求は以下の2つに分けることができます。


・他者からの評価への欲求
・自己の自己に対する評価への欲求（自尊心）


承認の欲求が満たされることで、自分は世の中の役に立っているという感情が湧き、逆に阻害されることで焦燥感や劣等感、無力感を抱くと言われます。


育児休業中など子育てで職場を離れている間、育児のほかに何もなし得ていない自分に焦りを感じる、という経験はないでしょうか。


仕事を通して他者から評価されたり、給料という形で働いた成果が見えたりすることは、承認欲求が満たされる分かりやすい例といえます。

自己実現の欲求

自己実現の欲求とは、より「一層自分であろう」とする欲求のことをいいます。


人には、自分が潜在的に持っている能力を開花させ、自分らしく生きたいという欲求があります。


マズローによれば、生理的欲求・安全の欲求・所属と愛の欲求・承認の欲求が十分に満たされたとしても、自分に適したことをしていない限り、新しい不満が生じるのだそうです。


もし、自分のこれまでの生き方や働き方にモヤモヤを抱えているとしたら、自分らしさとは何か、という問いに向き合う必要がありそうです。

マズローの欲求5段階説から読み解く自己実現とは？

マズローの欲求5段階説の最上階に位置する自己実現の欲求ですが、自己実現とは具体的にどのような状態なのでしょうか。


ここでは自己実現している人の特徴、また自己実現に近づくために押さえるべきポイントを紹介します。

自己実現している人の特徴とは？

自己実現とは、自分自身が持つ潜在的な能力を十分に発揮してより一層自分らしくあることでした。


自己実現の欲求をある程度満たした人にみられる特徴には、以下のようなものが挙げられます。


・自分が習得したスキルや能力、自分のエネルギーをすべて使って自己表現ができている

・自分の長所と短所を良く理解した上で、能力を発揮するには自分の長所を活かすことが必要だと心得ている

・自分が何をしたいかがわかっている

・自分がしたいことを他人に伝えて協力を求めることができる

・自分のしたいことに向かって集団をまとめ上げ、共同であたることができる


『自己実現』という言葉は、思いのほか曖昧でイメージしづらい言葉のように感じる方もいるかもしれません。


以上のような特徴から、より具体的に自己実現について捉えてみてください。

自己実現に向かうために大事なポイントとは？

マズローの欲求5段階説から、自己実現に向かうために押さえるべきポイントを２つ紹介します。


①基本的欲求は悪ではない
基本的欲求は、押さえつけるよりも引き出して十分に満たしてあげることで、人はより自分らしさに近づき幸福になる、とマズローは考えました。


欲望というと、良くないものとイメージしがちですが、より自分らしくあるためには自分の中の欲求に目を向け、満たしてあげることが必要です。


②欲求は低次の欲求から段階的に満たす
マズローの基本的欲求は、より低次の欲求から順に満たすことが大事なポイントです。


子育てにおいて、子供は親に見守られているという安心感があってはじめて、「やってみよう」と挑戦する気持ちが芽生える、というのを耳にしたことがありませんか。


子供に限らず、自分の中に安心感がないのに、自分を信じて挑戦するというのは難しいことなのです。

40代からできる自己実現に近づく方法

40代になると、自分のことは後回しにしてしまう人もいるでしょう。


しかし、人生100年時代なので、40代から自分がなりたい姿を目指すのも遅すぎることはありません。


ここでは、自己実現を目指すために取り組みたい、簡単でいつでもできる方法をご紹介します。

人生は選択の過程と捉える

人生は選択の連続だといわれます。日々の小さな選択ひとつひとつの積み重ねが未来を形作っていると捉えること。　


そして選択は、その都度、より自分自身が求める方を選び取るようにすることで自己実現に近づくことができます。


例えば、憧れているけれど普段は選ばないブランドの洋服を買ってみる、気になっている習い事を始めてみるなど。そんな風に自分の殻を破っていくことで、理想の自分に近づいて行くのではないでしょうか？

自分に対する信頼度を高める

日々いろいろな情報が手に入る現代では、他人の目や他人の評価軸が気になってしまいます。


しかし、他人の評価は気にする必要はありません。大切なのは、自分自身が満足しているかです。自分の本音に耳を傾け、自分の直感を大切にすることが大切です。


そうすることで自分に対する信頼を高め、自己実現へと自分を押し上げる力となります。


（参照文献　中野明　マズロー心理学入門：人間性心理学の源流を求めて）

まとめ

マズローの5段階欲求説より、人が持っている欲求、そして自己実現とはどのようなものかを解説しました。


自己実現に向けたステップは、自分の今置かれている状況から、どの階層の欲求が満たされていないのかを把握するところからスタートします。


例えば、お子さんが小さいと、自分のタイミングでトイレに行けない、睡眠が足りない、など生理的欲求を十分に満たすことが重要かもしれません。


マズローの5段階欲求を、今の自分を俯瞰してみるのに役立ててみてはいかがでしょうか。


承認の欲求、自己実現の欲求を叶えたい段階にいる方は、より一層自分らしく生きるために起業に挑戦してみてはいかがでしょうか。


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(文: 大塚 麻美)