- column
- 2022/06/22
働く女性とSDGs!女性のエンパワーメントは実現できる?
近年は、女性も男性と同じように働くのが当たり前の時代になりつつあります。社会で活躍する女性が増える一方で、結婚や出産を機に、家庭と仕事の両立に悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。
世界が注目するSDGsに「ジェンダー平等を実現しよう」という目標があります。日本でも、2021年に「ジェンダー平等」が新語・流行語に選出されるなど、働く女性を後押しする動きが活発化しています。
この記事では、日本におけるジェンダー平等の課題、企業による取り組み事例をご紹介し、女性のエンパワーメントについて考えていきます。
SDGsと女性のエンパワーメント
SDGsは国連で採択された、持続可能な開発目標のことで、より良い世界を目指すための国際社会共通の目標です。17の目標と具体的な169の達成基準が設けられ、解決すべき課題は多岐にわたります。その中でも、女性のエンパワーメントはSDGsの中心課題のひとつです。
■SDGs 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
SDGsの中で、女性のエンパワーメントを達成するために設けられたのが、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」です。「エンパワーメント」とは、次の2つを意味します。
⚫︎政治、経済、社会、文化的生活への参画および権利が満たされること
⚫︎自分の生活や環境を自分自身でコントロールする力を持つこと
SDGsの目標5では、次の達成基準のように、女性のエンパワーメントを図るための項目が設定されています。
⚫︎家庭内における責任分担を通じて、無報酬労働を認識・評価する
⚫︎政治、経済、公共分野における女性のリーダーシップの機会を確保する
⚫︎すべての女性のエンパワーメントのために適正な法規を導入・強化する
参照:外務省|APAN SDGs Action Platform
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/goal5.html
■女性のエンパワーメントの必要性
SDGsが目指す持続可能な社会の実現に向けて、女性のエンパワーメントは欠かせません。
長い歴史の中で、女性は差別や暴力の対象となりやすく、今でも経済的に弱い立場にある人や貧困に苦しむ人は、男性と比べて女性の割合が高いと言われています。
世界人口の半数は女性です。ジェンダー平等は基本的人権であり、経済発展の基盤です。
女性が差別なく社会に参加することで、多様な視点が得られるだけでなく、経済成長や貧困などさまざまな課題解決ができると考えられます。
日本におけるジェンダー平等
SDGsが掲げる「ジェンダー平等」ですが、日本社会の現状は、諸外国から大きく遅れをとっています。
世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表する「ジェンダーギャップ指数」は、経済、教育、環境、政治分野における男女格差を測る指標です。2021年の日本の順位は156カ国中120位という結果でした。
項目別に見ると、教育と健康分野のジェンダー指数は世界トップレベルであるのに対し、政治と経済分野で指数の低さが目立ちます。特に政治参画の低さは世界的に見ても顕著です。
日本の評価は、先進国の中では最低レベルで、アジア各国と比べても韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果です。日本でも女性の権利や社会進出が進んではいるものの、変化のスピードが遅く、世界からは取り残されています。
参照:内閣府男女共同参画局総務課|世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2021」を公表
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/202105_05.html
日本で女性の社会進出を阻むもの
①仕事と家庭の両立
近年では、結婚や出産といったライフイベントを経ても、働き続ける女性が増えています。それでもなお、家庭における家事の大半を、女性が担っている現状です。
家事や育児といった無報酬労働に時間を多く取られることで、家庭を優先せざるを得ないなど、女性のキャリア形成や社会進出の機会を失うことにつながります。
②ジェンダー・バイアス
「ジェンダー」とは、社会的・文化的につくられた男女差のことで、「ジェンダー・バイアス」とは、男女間における性的偏見を意味します。
例えば、男性は外で働き家計を支えるべき、女性は家事や育児を担うべき、など「男性だから」「女性だから」といった思考です。
社会に根強く残るジェンダー・バイアスは、可視化が難しく無意識に思い込みをしている人も多いため、問題の解消は大きな課題です。
③賃金格差
女性の賃金は男性の75%程度だとされており、以下を例に、賃金格差の背景にはさまざまな要因が考えられます。
⚫︎ 年功賃金制度
⚫︎管理職に女性が少ない女性の非正規雇用者が多い
男女雇用機会均等法の施行をはじめ賃金格差解消に向けた整備は進んでいるものの、男女間には依然として大きな差があります。
参照:厚生労働省|令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html
④政治参加の遅れ
日本社会における女性の政治参加の遅れは、国際社会でも指摘されています。日本の女性国会議員の比率は、いまだに10%に満たない状況で、世界平均値26.1%に遠く及ばない数値です。
女性のための環境づくりなど、政治的な働きかけによって、変えられることは多くあります。そのためには、女性国会議員の比率を高めることが不可欠です。
参照:Inter-Parliamentary Union|New IPU report: more women in parliament and more countries with gender parity
https://www.ipu.org/news/press-releases/2022-03/new-ipu-report-more-women-in-parliament-and-more-countries-with-gender-parity
企業による女性活躍のための取り組み
SDGsへの注目が高まる中、多くの企業が女性活躍のための取り組みを行っています。女性活躍推進には、制度の構築をはじめ研修やセミナーといった機会の提供など、多角的なアプローチが必要です。
■多様な働き方と休職制度
日本政府が掲げる「働き方改革」で、時短勤務やリモートワークが推奨されるなど、企業はさまざまな立場の人にとって働きやすい環境づくりに努めています。
次に紹介する制度は、いずれも味の素株式会社の特徴的な取り組みです。
⚫︎「どこでもオフィス」というテレワーク制度で、”いつでも、どこでも”勤務可能
⚫︎介護、育児、配偶者の転勤などを理由に希望勤務地を申告できる「エリア申告制度」を導入
⚫︎ライフイベントとキャリアを両立できるよう、育児休職、看護休職に加え、配偶者転勤帯同と不妊治療を事由とする休職制度を導入
結婚や子育てなどライフステージの変化にあわせて選択できる働き方は、女性のキャリア継続を後押ししています。
参照:味の素株式会社
https://story.ajinomoto.co.jp/report/040.html
■事業所内保育所・企業主導型保育所
待機児童の解消は、女性の社会進出を推進するために不可欠です。今では、行政のみならず多くの企業が、保育所の整備に取り組んでいます。
株式会社三菱UFJ銀行は、保育所の整備に加え、保育園探しをサポートする保活コンシェルジュサービスや保育施設立ち寄り通勤費支給制度など、独自の取り組みを行っています。
働く女性にとっては、子供との距離が近いことで送迎の負担が軽減される、子供の体調不良時にすぐに駆けつけられるなど、安心が得られる環境です。
参照:株式会社三菱UFJ銀行
https://www.mysite.bk.mufg.jp/career/career-lifedesign/
■女性のキャリア形成支援
働く女性の中には、キャリアアップをイメージしづらい女性も少なくありません。企業の取り組みは制度構築だけに留まらず、心理的なアプローチも積極的に行われています。
株式会社リコージャパンでは、女性社員の長期的な成長のために、キャリア意識変革研修や管理職候補育成研修を実施しています。他にも、育児休業取得者の女性社員に対して復職支援セミナーを開催するなど、女性の活躍推進に関する取り組みは社会的に高い評価を得ています。
働く女性がより広い視点で主体的にキャリアを描くためには、女性が働きやすい企業風土や女性の意欲を引き出す支援が求められます。
参照:株式会社リコージャパン
https://www.ricoh.co.jp/sales/about/sustainability/social
女性のエンパワーメントを実現させるために
企業主導の取り組みが積極的に行われるようになり、女性にとって働きやすい環境が整ってきているといえるでしょう。
しかし、ここで紹介した取り組みの多くは大企業や都市部を中心に行われており、会社員として働く女性の誰しもが社会の変化を感じているわけではありません。
SDGsが掲げる女性のエンパワーメントを実現させるためには、さまざまな仕組みが必要になると同時に、女性の主体性が求められます。
まずは、自分自身を最大限に活かすための、理想のキャリアを考えることが必要です。女性活躍の場は、会社員としての働き方に限らず、起業や複業でも広げられます。
ひとりひとりの女性が意識して行動することもまた、社会を変えていく大きな力です。
まとめ
SDGsの中心課題とされているとおり、女性のエンパワーメントを図る動きは今後ますます活発になると予想されます。
女性の活躍が期待される中、家庭と仕事を両立する自信がない、現状のまま働き続けるのが不安、起業・複業にチャレンジしたいけれど一歩踏み出せないなど、働き方に悩む女性は多くいるのではないでしょうか。
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(文:シャングルー迪子)